初春/石村
 


どういふことだ
まだ
ひとのかたちをして
星の上にゐる

急がなくてはいけない

廃村のはずれの小さな草むらに
菜の花が咲きはじめてゐる
……風にゆれてゐる
やさしいやうな
かなしいやうな
春にならうとしてゐる午後

俺はけだものになりたくて
おだやかな海にさけぶのだ

神なる者どもが降りてきて
俺らをのこらず 喰つてしまふ前に




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