美しい距離/
ミナト 螢
セロハンテープの一輪車
思い出を乗せて回り続けて
タイヤが擦り切れたら捨てる
それでもここまで進んだ胸に
小さく丸めて勲章のつもり
ざらざらとした埃の中には
苦い恋だとか淡い夢だとか
指先の裏を包んだ過去が舞い
粘り気の無い雪のようだった
もうゆっくりで良いと笑って
途切れた時間に魔が差しても
テープの端を持って走り出す
それはまだ何も付着する前に
透明なままの蓋を開けたから
空の色に少し触れてみたい
星の光に少し腫れてみたい
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