ひとつ つまびく/
木立 悟
録音した
ある日すべての音を出せる機械ができて
音楽はひとりひとりの頭の内に行ってしまった
やがて機械が棄てられた後も
演奏家たちが戻ることはなかった
此処が器のたどり着いた地
此処が響きの終わりの地
倒れつづけるかたちたちが
再び立ち上がり歩み去る浜辺
途切れ途切れの銀の螺旋が
わたしの指から飛び立つと
外は決まって雨になり
わたしのかたちをゆらめかせてゆく
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