白木蓮/蒼木りん
それも近道かもしれないけれど
私それすら気がつかず
通り過ぎるのを待つよ
木蓮が咲いたよ
桜が咲いたよ
まだ
野の花も咲きはじめだというのに
いっぺんに散るんだ
私はまだ
冬の皮を脱げないでいるのに
そうやって
おいてきぼり
無邪気さを失くしたから
名前なんて
いらないものでいたいなんて
親不孝で
ごめんなさい
名に恥じることばかり
覚えたことは
たくさんあるような
ないような
君が話さないものでよかった
目の無いものでよかった
時とは
速きもの
苦しさとは
長きもの
命とは
短きもの
自分とは
気づかぬもの
いまは
白木蓮
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