夜を歩く/立見春香
 
わだかまりが
嫌で
夜を歩くのです

わかってもらえない
プライドを捨てて
夜を歩くのです

すべてを終わらせるために
生きてきたわけではない

夜を歩いて
たどり着いたコンビニで
お弁当を買って帰るのです

すべてを終わらせるためには
死ねばいいのかしら?

そのお弁当の
鮭のしょっぱさに
むかしの母さんのことを思い出した

あの人が死んでも
すべては終わらなかった

なら、
私が死んでも
世界はなにひとつ変わらないのだろう

そんな淫猥で紫な空の下
別に死にたいわけではなく
ただただただただただ、夜を歩くのです






戻る   Point(8)