死人の詩/卯月とわ子
僕から遠くへ
何処でもない遠くへ
肉体から離れれば離れるほどに
あれほど泣いていた理由が分からなくなったよ
涙が枯れることはないだろうと
あんなに思っていたのに
いまじゃ瞼は乾いてカラカラさ
お別れというものが
こんなにあっさりしたものだとは
何も残せなかったと思っていたけれど
その方が良いこともあるんだろうと
今なら理解もできる
残されたものは
それ相応に生活していくんだ
だからと言って
僕が消えたわけでも無いんだろう
彼らのどこかしらに僕は居て
ふとした時に思い出したりするんだ
たとえば、ホラ
爪の先を見つめた時とか
親譲りの爪の形は
君にも受け継がれているから
そういう
日常と呼ばれるものの中で
僕は生きているんだ
だから
涙が枯れた今
何も惜しいとは思わないよ
戻る 編 削 Point(1)