雨のコンパス/ミナト 螢
 
雨のコンパスで描いた唄が
手の甲に乗せた鎖のように
水溜りを増やしていく
半径をどのくらいに広げても
踵に当たるメロディが好きだから
優しい言葉でなぞる世界に
いつの間に追い付けたのかな
雨のコンパスで回した傘を
唄の感情で曲げるられるほど
誰かに向けて渡したくなるよ
本当は濡れても良い人なんて
ひとりもいないんだって
鍵を握る前に受け止って欲しい
夢を抱く前に駆け抜けて欲しい
雨のコンパスで閉じた瞳に
瞼の化粧の落ちる音がして
稲妻の光を背負ったまま
傘の外で待つだけの時間は
眠れない夜の速報みたいに
もうすぐみんなが覚えた唄で
葉っぱの匂いと雨を切り離す
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