エッセイ/たもつ
 
の中でするものだ、
という先人の言葉をふと思い出した
例えば若かりし頃、バス会社の薄暗い車庫で
目の前にいる女性とは別の女性と
愛について語り合った
すべては清掃があってよかった
干からびた雑巾が片隅にあった気がするが
清掃が干からびることはなかった
清掃があることの幸せを噛みしめる今日この頃、
いくつかの命と呼ばれるものたちが
干からびるために並んでいる
あの薄暗い車庫に
このレジの近辺に
そこかしこに
実は万年筆の花が欲しかったのだ
そんな思いを察したのか
女性はやはり何も言わずに
三本目のホウキを手渡してくれたのだった
 
 

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