瞳/立見春香
 
わたしの瞳は小さい

つまりはそういうことで
人の気持ちがわからないから
優しい人からも、恨まれたりしていそう

静かな冬のお寺に
昔よく遊んだお地蔵さまがおひとり
孤独を怖れない、石の意志を持って
みる人を幸せにするほほえみを
うっすらと、刻んでいる


昔々の、ことじゃった

なにかと慌ただしい
その冬の、年の瀬のことじゃった
彼との終わりなき
愛と、憎しみと、嫉妬と、懈怠に、
疲れ果て
すがりつくように
このお地蔵さまを
拝んだときの

ことじゃった

答えはすぐに、出たのじゃった

そして今はもうその答えに
従ってあれ以来
一度も
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