無限のドードーと山小屋で暮らす一人のジジイと頭痛薬を知らない子どもたち/竜門勇気
 

昼間があまりに温かいので
散歩をする
糞のような現実は存在が
あんまりにも存在するので

催促するように歩くことでしか
乞うように移動することしか
重心をずらし続けることでしか
目の奥までこの風で冷やすことでしか
当たり前までたどり着くことが出来ない

湿った苔をいつの間にか踏んでいて
ここはどこだかわからない
酒くさい息を吐く
これは僕を取り巻く環境であって
それがつきまとうだけであって
歩き続ける限り
目にすることもない

まるで過去だ
あいつらはただ待っている
僕もそれはわかってる
いつまでも待たす気はねーさ
そのうち混ざって一緒に消えちまうんだ
ちょっとおとなしくしてろな
離れるなよ

気持ちの良い世界では
どんな事があるんだろう
誰かを羨んでる時に
一人で背もたれのない椅子に座る父の姿を思う
孤独がない世界では
どんな時何かを祝うのだろう
一度も壊れたことのない時計
誰がいつか自分を治す日が来るって
想像して微笑む朝に
僕は頭痛薬を知らない



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