時の種を蒔く/いねむり猫
 

できることは 限られている

それでも 私は 
時の種を蒔くことをやめない

すぐ自分の傍に 新しい世界の入口があること
その気付きを促すこと
その出会いの瞬間 

それまで住んでいた世界が
古い皮を脱ぎ捨てるように 輝き始める時 


小さな世界で 身体を縛る身近な人々の声
薄っぺらな善意と 鋭く研ぎ澄ました悪意
それらを丸呑みしてしまった自分の迂闊さ

息苦しさと堂々巡りの いくつもの夜の夜を数えて

そこから抜け出す力も尽きた あきらめ日々
鏡に映るのは 十分な栄養を与えられた抜け殻


気付きは あなたの中に準備されている
深く黒い夜の中でもがく度に 
あなたの中で 弱弱しくも輝く萌芽として
そこにすでにある


私にできることは限られている
それでも 時の種を蒔く
可能性の種を蒔くこと それは だれにも断る必要がない
 
気付きのきっかけを用意することに どのような権力も権威も必要ない

あなたさえそれを拒まなければ

世界は出会いに満ちている

戻る   Point(1)