僕は恋することすらできる/竜門勇気
 
りゆっくり
この坂道を下っていく
僕は忘れ物を思い出したふりをして
登っていく、この坂道を
ポケットの中のタバコを握りしめて
ゆっくり、ゆっくり登っていく

彼女は歩く
彼女の世界と
背を向けたまま一度だけ
僕は立ち止まり
白い息を吐いて
それがまっすぐ空に登っていくように祈っている

なんて寒い日だろう
なんて冷え込む朝だ
こんな日には温かいコーヒーを飲まなきゃ
まともじゃいられない
とてもじゃないが
まともじゃいられない
僕は祈ることすらできる
僕は恋することすらできる



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