陽炎のような真実の重さを/ホロウ・シカエルボク
いい話はまさかありはしないだろう、もちろん物量的にも感覚的にもそのすべてを書くことなんて出来はしない、出来るだけたくさんの要素を含まなければならないということだ、たくさんの物事を知ろうとすると、あらゆる種類の感情が渦巻くなかを潜り抜けていかなければならない、それはときおりおれを狂気の範疇へと連れて行く、生命として分不相応な真似をしているのではないかという気にさせられることがある、けれどそれはおそらく未知に対する恐怖のようなものなのだ、この先に踏み込んでいいのか、とんでもないことが起きるのではないか、そんな思いが心を躊躇わせるのだ、けれどそこには必ず足を踏み入れなければならない、おれは確かにそうして知り続けてきたのだ、ねえ、ちょっとしたしあわせのことや、優しい心のことなどおれはうたうつもりはない、もちろん、気まぐれにそんなものに手を付けることもあるけれど、おれの行きたい場所はいつだって決まっているし、そっちに居る連中も腕組みをしておれのことを眺めている、余裕の笑みを浮かべてね…癪だから、ムキにならざるを得ないんだ、こう見えておれは負けず嫌いだからね。
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