陽炎のような真実の重さを/ホロウ・シカエルボク
 

苦しみの記憶のように手のひらは赤く血走っている、毛細血管のなかを歪みが駆け巡っている、おれは繭のようになにかを抱えようとした姿勢で横たわっている、脳裏には真っ白い壁を放射状に散らばっていく亀裂のイメージが張り付いている、狂気の音譜は枝分かれするとしたものだ、トタン壁を遺言のような雨が打ち付けている、それなのに喉は渇ききっていて無理矢理に唾を飲み込むと軽い痛みを覚える、夜には人々の本性が芽吹かなかった種のように転がっている、それは遺失物のように存在していてどれがだれのものなのかまるで判別出来ない、なに、べつに珍しいことじゃない、吐き出されるもののほとんどは無記名としたものさ、でもおれはあるときそ
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