選択/中原馨
 
 何者かになりたかった。
 でも自分には無理だと見限った私がいた。
 夢を見るには心が老いていた。
 夢を見ることを捨てた私の後ろ髪を、夢を見たかった私が引張る。
 私はいつまでも未来に生きられない。
 合理主義的堅実な目標をとりあえず掲げて学校に通う。
 あと少しで私はのっぺらぼうにならなくてはいけない。
 めでたい。めでたい。みんなは嬉しそうだった。
 私はどこに消えてしまうのだろうか。
 疑問を抱えたまま、タイムリミットに向かう。

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