開花/邦秋
熟れた海に円い波を起こす
だけど小石では何も変わらない
ため息で窓が白くなる
それだけが今を生きている証
折り紙の飛行機 空へ放つ
誰かの指先を待ち続ける
過ぎ去れば跡形さえ無い
そんな儚いものを産み出す日々
だからせめてこの道を
進むときには常に立てた爪
抱かれた夢の気持ちも知らず
一途に種を零した
誰のためにではなく
自分が滅びない、そのためだけに
この一度限りの生を
顔も知らないあなたに託して
見上げれど 月は何時までも
消えることも満ちることもないまま
それでもやがて巡り来る
潮時のため育み絶やさず
花びら 誰もいない夜に
恥じらいから逃げ出して
秘めていた香りを蕾から
バルコニーに解き放った
このひと夜限りの生を
通りすがる蝙蝠に託して
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