行進/たもつ
らない角を曲がり
何の角だかわからない角から出てくる
むかし一緒に住んでいた僕の好きだった人は
毎日、夕食の献立のことばかり考えていた
お別れの日、彼女は角を曲がり
二度とは出てこなかった
それなのに僕は角を曲がり
また角から出てくる
何度角を曲がっても僕は僕に帰ってくる
もうこんな生活は嫌だ!
僕が帰る場所が僕であってはならない!
一人だけのシュプレヒコールをあげる
ご飯、豆腐の味噌汁、魚の煮付け、きんぴらごぼう
気がつけば高らかに
今夜の夕食の献立を叫びながら
僕が新しい角に吸い込まれていく
戻る 編 削 Point(3)