遭難/ホロウ・シカエルボク
、体温がこれ以上逃げて行かないようにつとめた、そしてそんな自衛は、おそらく最後の好機すら見逃してしまっていたに違いない、たとえおれがいまなにかに気を取られて立ち止まったとしても、きみはそれに気づかずに先へ先へと歩いて行くことだろう、おれたちはたまたま風に煽られて擦り寄ったビニール袋みたいに公園の出口へと向かっていた、暗い色を好んで着ることが多いきみは妙に淡い色のコートを着ていて、それはおれに懐かしいヒットソングを思い出させた、ああ、あのうたはこういうことだったんだ、と、そして、そのせいでこれからしばらくはそのうたのことをいまいましく思うだろうな、などと、すでにおれは明日からのことを考えていた、つぎ
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