くらやみ蝸牛/立見春香
 

ゆっくりと歩く蝸牛
それで
どんどんと黄昏の国が過ぎて
宵闇せまる暮らしの中で

わたしも
立ち止まったままの
蝸牛

さまよえる
迷子

冷たい風が
「シッ!」
っと
吹きつける
耳と瞼が切れるほどの速度で

なにを
急ぐのか
だれに
走らされるのか

闇の中へ
消え去る世界

ひそんでいる明日への感謝を
だれもが持っていない訳ではないのなら

集められた夜が解放され
なにかが生まれる闇の奥で
心地よい交流がはじまるのだろう


くらやみの
蝸牛は
そんな中
目を瞑り風を感じて
ゆっくりとゆっくりと
歩いている

ステキな渦巻きに
守られながら









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