夜の果ての墓/HAL
 
けにここを訪れた

献花すらも持たずただ視るためだけにここにきた
彼は献花など望まないことくらいはぼくでもわかる

ぼくは彼の愛したシャンソンを口ずさみながら
いちどだけ十字を切ろうとしたけれどやめた

献花と同じだ彼はきっとそれを侮辱と想うだろう
そろそろパリへ戻るための最終電車の時間がくる

ぼくはその墓と遥か彼方のアフリカ大陸を心に焼きつけ
なにも言わずに踵を返して遠く小さな駅へと向かう

もちろんAu revoirとは口が裂けても言わなかった





Merci Monsieur Louis=Ferdinand Celine.

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