ぬえ/たこ
 
ぬえ


しんしんと降りつもる秋の夜に
うぶごえをあげる ぬえがいた
かよわい躰をふるわせて
まぶたをわななかせている ―小さな命

ふかふかしたうぶ毛の先で
無数の夜霧がしずくとなって
きらりと、星影を輝かせながら
 ぽとり、ぽとりと
  おちてゆく

こぼれ落ちた星の夜の
ざわりとした天蓋は
 かたすみに隠れる闇より深く
 いまにも、ぬえをのみこみそう

ふるえるぬえよ、
お前はなにを想うのか
あたたかく鼓動する血脈に
いきものの火を宿らせて

ぬえよ、いま、なにを想うのか
夜はながく、月は遠い
暁に光が差し込んで
闇を打ち砕くのはまだ先だ
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