妙に冷めた口をきくやつらばかりだ/ホロウ・シカエルボク
 
た、「頭痛がしてきたよ」無理もない、と俺は労った、「俺は生きているものを食ったこともないからね」「あんたに伝わるような話が出来るとは思えない」、ふう、と、大蛇は諦めたようにため息をついた、「俺はお前にこう聞こうと思った、わかりあえないことに慣れているのか、と」「でもお前はどうせ、そんなことは大した問題じゃない、って答えるんだよな?」、俺は頷いた、やれやれ、と大蛇は呟いて天を仰いだ、「もう帰るよ」「寝てる邪魔をして悪かったな」、俺はひらひらと手を振って見せた、大蛇は少しだけ目を細めて答え、身を翻して暗闇の中へと這い込んで行った、その姿がすっかり見えなくなると、暗闇は消え失せ、いつもの寝室の景色が戻ってきた、カーペットはしばらくの間強い力で引っ張られたみたいにずれて、そしてしっとりと濡れているように見えたが、俺が大欠伸をして再び横になるころにはすっかり元に戻っていた、そうして、つまらない肉であるこの俺は大蛇の胃袋の住人にならずに済んだのだ。


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