二〇一九年初冬/山人
 
暖かくなり背中や胸が汗ばんでくるのを自覚する。それを何十回と繰り返すとようやく雪が除去され、いたるところにこびりついた、いやなおもいが剥がれ落ちてくる。
 定期的に訪れる建設業者の除雪車が、警告音と稼働音を響かせて集落の落胆を削り取ってゆく。それらを眺め、簡単な事務的な作業をしつつ、時とたわむれた。

 七日、朝、外は雪も降らず、少しばかりのときめきもあったがすぐに羽を失い、湿った雪の上に墜落している。行動を起こすべきことは存在するが、それは確固たるものでもなく、ただの無機質な存在でしかない。しばらく、その、「存在」を放牧しておくべきかということを考えている。
 朝食を終え、すでに二時間以上経ち、しかしまだ洗顔や投薬すらもしていない。それらを終えて日記を書くか。それが終わってからは、また何をするか考え、そのあとは別な場所へ行くための羽繕いでもするしかないのだろう。
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