幽霊の見える日、洗面所の鏡を万遍無く塗り潰して。/ホロウ・シカエルボク
幽霊の見える日、洗面所の鏡を万遍無く塗り潰して、どこからか忍び込んだ鼠が食い破った洗顔フォームのチューブをごみ箱に投げ込んだ、太陽が顔を見せる時間があまりなかった日、深く息を吸い込んだら黴の臭いを嗅いだ気がした…ディスプレイではミレーヌ・ファルメールが巨大な蜘蛛と戯れている、ティッシュを抜き取って鼻を掃除するとほんの僅かに出血している、別に珍しいことじゃない―冬はとくにそんなふうになることが多い―過ぎてしまえば瞬き程度の一日だった、そしてそれもやはりべつに珍しいことじゃない、強張った手首を折り曲げて野性を思い出そうとする時間の…それとはかけ離れた種類の疲弊、受け入れることと慣れることは同じでは
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