入口で遊ぶのはずいぶん昔にやめたんだ/ホロウ・シカエルボク
 
が嘘だって言っているわけじゃないんだ、信じられるやつは信じていていいのさ、でも俺にはそう出来ないというだけの話なんだ…この前、やたら眠れない夜があってさ、四つん這いになって虫の真似をしてみたんだ、餌を食い、繁殖して、糞を落として、死んでみた、やたらと短い人生だったよ、でもそこになにかがある気がして、幾世代分の虫の生を生きてみた、そうしたらわかったんだよ、あいつらが鳴き声を上げ始めた理由が…「吠えろ」って、あったよな?カーテンみたいな髭を生やしたふとっちょが書いたやつさ―それだよ、咆哮だよ、ハウリングさ、俺はたぶん一生かけて、自分の吠え方を探していくんだ、言葉の森を彷徨うのさ、意識が飢餓に陥らないように―自分自身の奥底を屠り、血肉に変えていくんだ、それは人生が続く限り連鎖していく、さあ、血塗れの俺の両手を御覧!食事は終わった、あとは瞼を畳んで日常に溶け込むのみさ―。


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