砂の中のスイム、充血した水晶体、それから脈絡のない明け方の夢/ホロウ・シカエルボク
 

無頭症の胎児の寝息が内耳で呪詛になる日、罫線の中の鉛筆の芯は血のように赤く、「ねえ君、亡霊はきっと足音を立てないのが正解」と、置手紙の文面にあるのは、手を振るよりもずっと痛みに満ちたさよならの意思で、古い瓶の中いっぱいに詰め込まれた果実は甘い酒になり損ねた、何が原因なのかどこの誰にもきっと理解出来ない、消失の方が愛おしく思えるのは仕方のないこと、窓に張りついた闇は無口なまま殺意のような視線を送っている女のようで、急いで飲んだ珈琲に焼かれた喉は呼気にノイズをちりばめる、シンクの中のたったひとつのマグカップ、その底に、言いそびれた言葉のようなほんの少しの水滴、換気扇は歯軋りしている、冬の風が強過ぎ
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