たとえば小石の落ちる音のように/ホロウ・シカエルボク
 
らばるパンフレットにはここがまだ生きていた時代の記録が残されている、人が溢れ、喜びに満ちて、明るい照明が塵ひとつない壁を、床を存分に照らし―それは古い歌のようにがらんどうの空間の中を漂っている、誰に聞かせるあてもない、ひとりごとのような歌―足音は自然にそのメロディとリンクし続ける、本当に生き永らえることが出来るのは、すでに終わってしまったものたちだ…二階と三階は客室になっていて、見るべきものはなにもない、畳は腐食して踏み入ることも出来ないし、天井のクロスは剥がれ落ちて幽霊のように垂れ下がっている、どの部屋にもソファや布団が詰め込まれていて、黴臭い…四階はフロアーすべてを使ったラウンジの跡がある、床
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