散るがごとく/大覚アキラ
 
半ば追い出されるようにして
いつもの店を出たところまでは
なんとなく覚えているが
そこから先は暗転

気がつけば
白い病室のベッドの上にいて
ベッドの横の安っぽいパイプ椅子には
病人みたいに青い顔の女房が座っている

アンタ今月に入ってからもう三回目だよ
こっちも商売だからやってるけどね
もう面倒見切れんよまったく
いい加減にしないとホントに死ぬよ

呆れ顔で説教する医者を無視して
窓の外を埋め尽くす桜を眺めながら
これが最後の桜かもしれないな
と思った
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