路地で立ち止まっていたナミ/ホロウ・シカエルボク
濡れた草のにおいがする薄暗い路地で
過ぎる時を噛み砕くように佇んでいる女
背骨の終わるところまで伸びた黒髪に表情は隠れて
これまでに一度だって見たことはなかったが
捩れた棒状の飴みたいな身体を包んだ水色のワンピースからだらりと伸びる
鉤状に折れた槍のような指はいつでも
欲しいもの、あるいは憎しみをぶつけるべきものを
決して逃すまいとするかのような気概に満ちていた
時折、低く擦れた声で呪文のような独り言を呟いていたり
奇妙な旋律と言語で構成された歌を小さく口ずさんでいた
白く、足首を隠す程度しかない靴下を履いていて
靴屋の店頭のワゴンに放り込んであるような白いスニーカーを履
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