野良犬たちが今夜、ぼくを迎えに来る/竜門勇気
 

きみたちとぼくが
笑顔でしかつながってないのは
もうわかってるだろ?
握手に置き換えられる何かを
交わし合ってる間だけ
社会が発生する

寝言で使い合うお互いの柔らかさ
すり減るたびに痛かった
それでも笑いながら続けた
寝言は続いた
それは痛みを金に替えながら
火花のように目をくらませる

野良犬たちは
夜の間、吠える
夜を朝まで貫いて
ぼくを呼ぶ

きみたちとぼくが
どんな違いがあるかって
初めて会ったときから考えてた
理解は無力だった
机の上に落ちてきたクサギカメムシに
ゆっくり指を差し出す
戸惑いながら登ってきたところで
窓まで歩いていく
こういうことを
ずっと繰り返してきた

野良犬たちが
今夜、ぼくを迎えに来る
胸に後ろを振り返るための憂鬱が涌く
それでも今日
ぼくは野良犬に帰ろう
もう誰にも飼われない
もう誰ともうまくはやらない


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