小さな秋/帆場蔵人
 
ちいさい秋みぃつけた、と
歌う、子らがいなくなって
久しい庭で百歳近い老木が

風にひどく咳をする
また長く延びる影を
煩わしく思った人が

老木を切り倒して
春には明るい庭で
山は桜に宴を開く

夏は乳母車を押して
川のせせらぎがいく
わたしは眠りのなか

やがて晩秋という
秋の末っ子が切り株の
年輪を数え終わる頃

切り株に桐の葉が傘をさす
わたしは葉陰で眼をさます
桐はきりなく天を突き刺す

のびあがっていく、冬をつん裂いて
春、夏、秋、冬、のたくさん子ら
数限りなくまた歌に興じている

ちいさい秋、みぃつけた

わたしは葉陰で眼をさまして
晩秋という秋の末っ子の歌に
耳をすましている、小さな秋
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