晩秋の空に/Lucy
忘れることができたのは
ついに自分に勝てたから
ではなく
燃え盛っていた胸の火が
ただ儚くもかき消えたから
恋慕い
ついに手に入れたもの
手に入らなかったものたちが
木立の間にひくく
星のように煌めいて
揺らぐ心に染みのように滲む
得たいのしれない憧れ
焦り
いさかいの挙げ句
辿り着く野辺の分かれ道
ささやかな労り
執着
見果てぬ夢
手の中に握りしめあるいは胸に秘めあたため
守ってきたものを
一枚一枚
葉を落とすように
手放して
稜線に薄い明かりを残し
濃い藍色に暮れてゆく空に
細い小枝のいちいちまで
鮮やかなシルエットとして焼き付けて
やがては闇に溶けていく
さっぱりと
何も持たない冬の木として
私はそこに佇てるだろうか
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