顔/ミナト 螢
抜け出したいこの単純な庭で
光を集める瞳を閉じても
草を刈り指を切る
それだけで
音もなく血が流れていくのは
ジオラマのように生まれ変わるから
心の中で作られた理想を
ユニットバスに沈めて戻すの
悪いことなんて何もしないのに
鏡の前に立つと見透かされる
うまく剃れずに失敗したんだね
両手に残るワックスみたいに
短くなった髪の毛を撫でると
ハネた場所がおとなしくなるまで
いつもより少し目線を下げた
外に出るのが怖い今日だって
カミソリ負けの肌を晒しても
人は生きる水はうまい
それだけが
凸凹の朝にけじめをつける
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