彗星/ミナト 螢
 
終わりに向かう旅の途中は
まだ数えきれないハードルを残して
越えてきた時間の上に座った
安心よりも不安を拾った

あなたの身体が私の心を
抜け出す速度で擦る消しゴムは
柔らかい輪郭をぼかしながら
記憶の果てまで手を伸ばしたよ

髪の毛を結んだ赤いリボンも
唇に塗ったリップクリームも
風に負けずに強かったけれど
その色を失くすように生まれた

片目だけで笑う写真みたいに
格好つけている姿を除けば
ためらいもなく始まった空には
境目がなくて美しかった

見えないものほど長く惹かれる
彗星のような軌道の上に
少し痩せた思い出を乗せるなら
線を足す前に光を混ぜていく
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