悪夢とビニール・ジャングル/岡部淳太郎
 
ビニールが
     いきなり君の顔にはりつく
突風にあおられて
(どこから吹く どこに吹く 風)
君の顔面に
呼吸を奪う透明な仮面
ふと見渡すと
群集のひとりひとりに みな
ビニールの仮面がはりついている
肌に癒着して
取れない

歩く
  あるいは歩かない
          透明な
             仮面の行列

その夜 君の眠りの中に
           魔物が現われる
ベッドに横たわった君の身体の上に
何かが重くのしかかり
ケルベロスやらセイレンやらヒュドラやら
それはもう明らかな悪夢
仮面の人々はみな
うなされて
縛りつけられ
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