火照り/すいせい
 
ない
ゆきは
とても愛されたしょうじょだった
けれども愛されるたび
息を殺して
愛されないふりをした
ゆき  のふるあさ
今度はほんとうにいきを殺してしまった
ゆき  は
悲しさに  微かなむねをふるわせて
愛されたことを  忘れようとした
ゆき  の自涜は止むことはなく
ゆき  のすむ国を
ななねん  ゆきに鎖ざした
船はやがてくちて
底には枯葉やさかなの骸がよこたわり
くるくるとまわる
それは  ふるまえのただしい行方を
探しているようで
ちがうよ  ちがうんだよ
と
いいわけしてあげたいと
思った
ゆき  というしょうじょを
愛した
かのじょ
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