僕は彼女の手を握っていた/la_feminite_nue(死に巫女)
 
くのを、
僕はずっと見守っていた。
いつか二人で歩いた道を辿りながら、
ずっと、ずっと、彼女の手を握って。
彼女が彼女でなくなるのを、僕はずっと見ていた。

「わたしね、あの雲に乗れると思うんだ」
今なら……と彼女は言った。

僕は彼女の手を握っていた。
そうして、彼女が消え去ってしまうまで。
そうして、彼女が、この世界からなくなってしまうまで。
彼女が、ただ一つの楽器になってしまうまで。
彼女が、忘れられた思い出だけの存在となってしまうまで。
僕は……彼女の手を握っていた。
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