蟻地獄/卯月とわ子
甘い声が誘う先には砂糖の山
群がる人々はもうアリンコで
僕もこれからあの中へ混じるのだと
考えるだけで鳥肌が立つ
明日の方角を指示していた円盤は
いつの間にか壊れて
今頼りになるのはこの声だけなのに
どれだけ道を分けたって
たどり着くのはやっぱりここなんだ
僕は間違えたのかもしれない
捨ててきてしまったガラクタの中に
本当は大切な物があった気がして
いつも不安なんだ
優しい声の裏側はきっと醜いと
分かっていながら従うのは
その醜さを僕も持ち合わせているからで
それを理解している自分は
他の誰かさん達よりも優れていると
考えてしまう醜い有様
ホラもう砂糖の山にたどり着いたよ
此処は救いのない蟻地獄
飲み込まれたら最後
もう青空は見られないね
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