真似事――文字をほどいて火を点ける/ただのみきや
めき海になる
忘れ物取りに帰ってそれっきり
死んだ友夢で変わらず馬鹿をやる
老いぼれて何に投げるか火炎瓶
自らを砕いて炎まき散らす
立ち枯れて冬を待たずに逝く人よ
祖父と孫ほども離れた身と心
背伸びした祖母の戸棚の角砂糖
電子ジャー壊れる時も計ってか
でかすぎるアカミミガメに蹴躓く
重さより心傾く天秤か
花房のしずく瞳にもらい受け
わからず屋の目で君は葡萄を吸う
風上の見知らぬ女の吐く煙草
《真似事――文字をほどいて火を点ける》
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