風景観察官の手紙/朝倉キンジ
すべての生き物がそう感じ
雁はアルビレオの
青色とみかん色の灯を
誰かの造った
みんなの文明オブジェなんだと
考えて満足げにうなずきます
じっさい 冬の連星は
見えない世界から
透明な巨大原理で
浮かべられている
何かの細工のようですし
むこうまで
水や気体が怖いくらい
いっぱいなのだから
考えが届きません
あなたは 博物館風の空調が香る
暗い道をいったとき
高次ユークリドのひもを信じて
ふり返り ふり返り
歩いた距離を確かめながら
私にその道の印象を伝えてくれました
ですから
今夜 私のしぐさは
この未知の前方でわずかにも
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