真似事――落下する意識/ただのみきや
 
わたしだけ



顔もなく銀杏(いちょう)並木で振り返り

引き裂くか縫い閉じるのか若き日を

インド香(こう)白紙を歩いて来る女



宵闇に近くて遠い蟋蟀か

隠れ泣く死者の想いか蟋蟀よ

蟋蟀に誘われ今宵も墓地巡り



愛は嘘欲が真の船が出る

朝露に夢見溺れたギンヤンマ

青白い夢の死体を封筒へ




             《真似事――落下する意識:2019年9月28日》








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