少女だった/あるみ
次の季節が
わからなくなる時がある
幼い日の写真のように
一瞬だけ切り取られて
動けなくなる
あの日
羽ばたいた蝶々の鱗粉が
鼻先をくすぐり
視線を逸らすことを覚えた
それだけは覚えている
新しい服に
染まらない自分を
今はうなづいて受け入れられる
上手くいかないお化粧も
失敗したパーマもネイルも
失くしたピアスも
愛しい私の鱗粉
誰かの鼻先をくすぐり
広がっていく世界の過程
切り取られた時間の中で
思い出そうとする
次の季節は何なのか
どこに行けばいいのか
風が鼻先をくすぐる
切り取られたはずの風景が
動きはじめる
わたし
少女だった
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