乱調、音程は保ちつも/
坂本瞳子
優しくない私は
救いようがなくて
自分でもほとほと
呆れてしまうくらいで
そのくせ見栄っ張りで
礼節をわきまえてる
ふりをしてみたり
人前では決して
涙を流さずにいたり
取り乱して声を荒げたり
汚い言葉で誰かを罵ったり
そんなことはしないけれど
心の中では舌を出して
狡猾なまでに薄汚れた
気持ちをひた隠しにして
冷徹な表情を装って
平然と歩き続ける
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