太鼓を打つ/
もちはる
早朝の寺
禅堂の前で
太鼓の横に立つ
齢も性も捨て
バチを握りしめる
息を吐き切り
気合を入れて
鹿の皮の
裏側まで打ち抜く
どん どん どん…
と 六つ
空気を通るその音は
腹の底まで響き
生き物となって
禅堂を走りまわり
長い廊下を転がって
境内へ飛び出し
目を覚ました樹々の梢まで
確と刻を知らせる
バチをそっと収め
余韻に導かれ
静寂の中へ
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