肉うどん/北村 守通
止められていた
それを
私は買ってやることができなかった
と記憶している
さびしそうな顔して
どこか遠くを見つめていた
と記憶している
と記憶している
と記憶している
と記憶している
だけであって
確かめる術はない
その人は
結局
アイスクリームは食べれなかった
筈だ
食べられないまま
送り出された
筈だ
私は
もう
彼に聞くことはできなくなった
彼が
どうして
頑ななまでに肉うどんだったのか
ついに
聞くことはできなかった
いつしか
私も
肉うどんだった
ぼやけていく
父の輪郭を
懐から取り出して
忘れた頃に
忘れないように
肉うどんで
なぞっているのだった
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