肉うどん/北村 守通
その人は
肉うどんだった
いつも
どんなに
美しい
品々が
お品書きを
彩っていたとしても
頑なに
力こぶよりも
頑なに
磨き忘れられていた
眼球が
輝きを取り戻し
おそらくは
少年時代の
輝きを取り戻し
映し出そうとしていたのは
どこの
道
どこの
屋根
どこの
誰それ
だったのか
その人が
アイスクリームを食べたいと
つぶやいたのだった
ぽつんと
つぶやいたのだった
私が発つ前の日
私が訪れた最期の日
力こぶが小さくなっていた日
医師に止め
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