幻想楽園島/秋葉竹
幻の夜、
ヤドガリも寝静まった砂浜に
楽園の島のヤシの実が流れ着く。
その島では、あした、
一番早起きの牝牛が
真綿のように軽やかな雲の幻を
牧場の木陰に見る眼には
敬虔なあたたかい涙が皮膜のように
浮かび沈んでいるだろう、
その風景を遠くから眺めて
美しい、
と思う心の隙間に入り込む
悪魔の爪のように長く鋭い囁き声
私の存在すら疑う
生きている意味を問う声。
風に乗って
耳まで運ばれ
風に乗って
遠ざかって行く
ふと、
呪いかと聞き違えるほどのその声は
ただ
だれかの愛を求めたかつての私の
血を吐く祈りの結晶を削り
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)