どうして時々どこかに出かけるのだろう/ホロウ・シカエルボク
々どこかに出かけるのだろう
たいした稼ぎもないのに
何ヶ月も前から体制を整えて
ちょっとした買い物なんかのために
帰るためのターミナルであと半時間ほどを過ごすとき
俺はいつでも自分の役を忘れた舞台役者のように
あるはずの台詞を見つけられずに佇んでいるみたいな気分になる
ただ人々がすれ違うだけのここは
ほんとは地名すら必要ではなく
世界のどこでもないような場所だ
そんな場所にいるからこそ
自分自身をしばらく泳がせて
意識をリブートさせることが出来る
ここはどこでもなく
俺は誰でもない
さながら来世を待つ
あの世の待合だ
アナウンスは繰り返す
誰かがどこかへ旅立ち
誰かがどこかへ帰ろうとしている
彼らには名前があるだろうか
彼らの向かうべき場所は
彼らにとって
彼らを取り戻すための場所だろうか?
どこかの乗り場の扉が
空気を吹き出しながら閉まる
これは現実じゃない
現実に戻るためのトランジションなのだ
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