編み物ver1.1.1.1.1.1.1.1.1.../鈴木歯車
 
あなたはある日から編み物に熱を入れはじめた
はじめ一本だった糸を、互い違いに名前を付けて、
それらで淡々と、まぐわいを繰り返すことがたまらないのと笑っていた 
ひどく静かに

実はあなたを黒い淵から救い出すつもりだった
ぼくは編まれたものを 
ハサミで引き裂いたりもした
事実、かぎりない交配の果てに生まれたものは
化け物ではなく
おびただしい数の ただの赤い毛糸の衣類だったのに

何がそんなに恐ろしいの、とあなたは言った
そんな話が持ち上がるたび ぼくらは殴り合ったりもした
何が恐ろしいのかはとうとう分からなかったし
こんな季節に赤いセーターなんて
狂ってんのか

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