いまのうち/坂本瞳子
 
膕(ひかがみ)が疼くのは
満月のせいだろう
そう思っていたのに
今宵は月が見えない
月灯りすら零れてこない

不意に目の前に現れ
仁王立ちするあなたの
首元に輝くルナフラッシュに
私の目は潰された

そしてわ私の左の肘の先から
尻尾が生えて伸び続け
猛烈なスピードと強さで
この身体を雁字搦めにして

私はいま大木に吊るされ
振り子のように揺れている

そう
これはすべて
月が膕に語りかける悪夢
明朝にはすべて消え失せる
太陽が昇る前に
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